スピリチュアルとは何かについて考えると、日本人なら目に見えない世界を想像すると思います。アメリカのスピリチュアルでは、それは一面に過ぎません。私自身、アメリカに来たばかりの頃は、日本で考える「アメリカのスピリチュアル」に出会えず、少々驚きました。そこで、現代アメリカのスピリチュアルの特徴を理解するためポイントをまとめました。
現代アメリカのスピリチュアルを理解するための11のポイント
アメリカのスピリチュアルが日本のスピリチュアルと大きく異なる点は、それぞれの国民性の違いにも似ています。日本人は八百万の神々をナチュラルに受け入れ、周囲と調和し、「信じることで救われる」という他力の思想にもなじみます。しかし、アメリカで自由と独立が好きな人たちが多いですから、基本的には誰かに頼るよりも、自分の力を最大限に活用することが好きなようです。
1.元祖「スピリチュアル」は、アメリカにあり
「スピリチュアル」という言葉の起源は、1840年代末にアメリカで始まったスピリチュアリズム(心霊主義)運動にあります。亡くなった人の霊やスピリットガイドとの交流、死後の世界の存在や、スピリットによるヒーリングを肯定する宗教運動です。キリスト教的な「神」ではなく、世界の源としての「無限の知性」を信じ、あらゆる現象はその表れであると考えました。ちなみに、よく似たムーブメントに神智学とその派生団体があり、彼らは死者との交流はせず、アセンデッドマスターや大天使などのチャネリングメッセージを伝えます。どちらも現代の「スピリチュアル」と呼ばれるジャンルの成立にも大きく貢献しました。
2.引き寄せの法則はキリスト教系だった?
90年代に『ザ・シークレット』で有名になった引き寄せの法則は、19世紀末から20世紀初頭にかけて起きたキリスト教系のニューソート(新思考)にルーツがあります。ここではスピリチュアリズム運動に見られた「無限の知性」という考えを引き継ぎ、その個別の表現としての人間と宇宙が呼応すること(As above, so below)など、現代スピリチュアルの基盤となる考えが多く含まれています。大きく異なるのは、その教えのひとつひとつが聖書の言葉に基づいているところです。時代を経て、宗教色を抜いたものが、現代の引き寄せの法則になっています。
3.東洋思想とカウンターカルチャー
アメリカのスピリチュアルを理解する上で、大きなターニングポイントとなるのは、60年代のカウンターカルチャーと呼ばれるムーブメントです。カウンターカルチャーとは、直訳すれば「対抗文化」であり、社会の既成概念や資本主義・物質主義に反対する人たちが作った思想、音楽、文学、社会的な潮流などを指します。この時代には、ヒンズー教、仏教をはじめとする東洋哲学が流行し、若者たちはインドやネパールを旅し、キリスト教的主流とは異なるオルタナティブな価値観を形成しました。その他にも、反戦運動、人権運動、ヨガや瞑想、座禅、スーフィズム、エコロジー、コミュニティーリビング、本来的な人間性の回復など、この時代の流行した文化は、現代のライフスタイルにも大きく影響を与えています。
4.ニューエイジはもう古い?
60年代のカウンターカルチャーに始まり、それを言わば商業的に発展させたのが、70年代から80年代にかけてのニューエイジ運動です。ニューエイジとは、その当時、古臭くなっていた「スピリチュアル」に対抗する新しいジャンルでもあったのですが、現在のアメリカで「ニューエイジ的」と言えば、「胡散臭いもの」を意味するようになってしまいました。一説によると、80年代末に、マーケティングの観点から出版社が一斉にニューエイジという用語の仕様をやめたことに起因して、どんどん言葉が古びてしまったと言われます。このカテゴリの下には、現代の私たちがスピリチュアルと呼ぶ要素(宇宙的進化論、ウォークイン、チャネリング、水瓶座の時代、輪廻転生、占星術、ヒーリング、クリスタルなど)が、ほとんど当てはまります。そして、モデルチェンジをしながら、今でも発展を続けています。
5.コンピュータ、インターネットとテクノユートピア主義
アメリカのスピリチュアルを語る上で、コンピュータとインターネットの存在は欠かせません。アップルを立ち上げたスティーブ・ジョブズは、70年代半ばに悟りを求めてインドを旅したことが知られています。コンピュータやインターネットがどうしてスピリチュアルとつながるかと言うと、古い権威やシステムからの社会的、経済的、政治的、文化的な解放を可能にし、さらには時空や肉体というバリアすらも超越できるからです。このような考え方はテクノユートピア主義と呼ばれ、90年代後半から2010年代にかけて、特にシリコンバレーで流行しました。
6.「スピリチュアルだけど、宗教的ではない」
現代のアメリカ人は、「スピリチュアルだけど、宗教的ではない spiritual, but not religious」と言われます。宗教的な教義には従わないけれども、科学で解明できない世界を信じるという意味です。この考え方はミレニアル(2000年代生まれ)以降の世代に多いと言われますが、一般的な日本人の感覚にも近いように感じますね。
アメリカには、非常に熱心なキリスト教信者がいる一方で、宗教に否定的な人も多く存在します。特にキリスト教的な価値観は、日本で言う「世間体」のように、個人の自由を制限し、罪悪感を植え付けるモラルコントロールとして利用されてきた一面がありますから、あまりよく思わない人もいるのです。
日本と大きく違うのは、まったくの無神論者がいるところです。日本人は無宗教を自認していても生活の一部として縁起をかつぎますし、霊やカミの領域に、少なからず畏敬の念を抱きます。アメリカの無神論者は、非科学的なことは一切信じません。彼らにとっては、科学が宗教の位置を占めているとも言えます。
7.科学好きのアメリカ人は、瞑想と仏教が好き
アメリカで瞑想やヨガ、仏教がブームになったのは、それが非常に「科学的」だからです。瞑想やヨガの肉体的・精神的健康に及ぼす効果が科学的にも証明されていることは、よく知られていますよね。仏教が科学的とされるのは、キリスト教にあるような「神の恩寵による救い」というファジーなゴールを目指すのではなく、自律と訓練による苦しみからの解放という、非常に実践的な目標を目指しているからです。そしてブッダも、超人的な存在ではなく、マインドの仕組みを科学的に分析することで宇宙の真理に達し、それを人々に伝えたティーチャーと考えられています。自力が好きなアメリカ人の傾向に、非常によくマッチしたのでしょうね。
自分の感情や思考を眺めるマインドフルネスの教えは、ドラッグやアルコール依存症の相互自助グループにも取り入れられています。私も行ったことがありますけど、なんとなく瞑想したい人が集まるコミュニティと比べると、熱気が違います。
8.多民族・多文化スピリチュアル
アメリカは多民族国家だけあって、スピリチュアルのジャンルも多文化的に拡がっています。これは、その土地の民族分布にも関連しているのですが、たとえば私の住む地域では、仏教でも、日系、中国系、韓国系、ベトナム、タイ、チベットなど多岐に分かれています。シャーマニズムが学びたければメキシコ系やアフリカ系のシャーマンがいますし、教会に通いたければ、選択肢は数限りなくあります。こうした教会や寺院、スピリチュアルサークルは、人種・文化ベースのコミュニティやセーフティネットとしても機能していて、小規模かつ非営利な活動を行っています。
アメリカ人は科学を愛する一方で、日本では疑似科学と言われてしまうようなハーブ療法、フラワーレメディ、ホメオパシーレメディなども、スーパーマーケットで売っていますし、漢方医や感情のセラピーも盛んです。もちろん「そんなものは信じない」と言う人も少なくありません。選択肢の幅が広いのは、アメリカの面白さだと思います。
9.スピリチュアリティについてオープンに話すアーティストやセレブも多い
アメリカには、自分の信仰やスピリチュアルなプラクティスについて、オープンに話すセレブリティが非常に多いです。最近ではカニエ・ウエストのボーンアゲインクリスチャンを始めとして、マドンナのカバラ、ロバート・ギアのチベット仏教などが有名ですが、瞑想を実践していると話した有名人は、アーティストや映画監督、起業家、ビッグテックのCEOなど非常に多いです。
10.サタニック寺院とアナキスト
最近のアメリカのスピリチュアルシーンを語る上で、サタニック教会の存在は欠かせません。2013年に設立されたこの団体は、その名の通り悪魔主義者が集います。そう聞くと、いかにもオカルトチックな何かを想像しますが、実際は既成の宗教団体や運動の「堕落」に対するカウンターとして立ち上がった風刺的なムーブメントです。彼らの7つの信条の中には、「すべての生き物に対して思いやりと共感を持って行動する」、「自分の身体は不可侵であり、自分の意志だけに従う」など、デーモン小暮閣下並みに優等生的かつヒューマニタリアンな教義が並び、イスラム教徒の難民支援や、子どもの体罰防止、LGBTQの人権推進、中絶禁止法反対など、キリスト教保守思想に反対する活動をしています。
Satanic Temple Official Website
11.アメリカのスピリチュアルには、社会運動がつきもの
アメリカのスピリチュアルは、スピリチュアリズムやニューソートの昔から、社会運動と切っても切り離せないものでした。彼らが奴隷解放に大きく貢献したことは、よく知られています。また60年代に市民権運動やベトナム反戦運動も、スピリチュアルな教えや宗教的指導者の存在は切り離すことができません。2019年の大統候補予備選挙では、イエス・キリストをチャネリングした『奇跡のコース』に関する著書で有名なマリアン・ウイリアムソンが民主党から出馬しました。
アメリカには、スピリチュアル的なバックグラウンドの有無に関わらず、自分を変え、コミュニティと社会を変え、やがて世界を変えることを、非常に熱心に捉える人が多いようです。それがアメリカ特有のダイナミズムを生む時もあれば、紛争と混乱ばかりをもたらす時もあります。その一方で、ただ静かにコミュニティと世界のために祈りを捧げ、光であろうとする人たちもいます。
一体、社会が良くなっているのかと聞かれると、移民2年生の私にはわかりませんが、多民族国家だからこそ、それぞれの民族の心を支え、互いを隔てる壁を越えるためにも、百花繚乱のスピリチュアリティがあるのだろうと思います。
まとめ
アメリカのスピリチュアルは、日本と比べると、その成り立ちからして主流に逆らい、新しい価値観と時代を築いたり、自立精神を養う性質が強いと思います。日本のふわっとしたスピリチュアルのよさがまったくないので、最初はびっくりしました。日本人がアメリカのスピリチュアルに期待するチャネラーやサイキック系の人は、シャスタ山やセドナに多くいるようです。
最近では、スピリチュアルティーチャーを集めた大規模イベントや、オンラインチャンネルが人気で、今後、ますます発展していくのではないかと思います。
日本神道の神社はアメリカ本土にもあります。いつか行ってみたいです。
日本とアメリカ
歴史からの価値観が大きく違って
スピリチュアルもしかりと言ったところでしょうか。
無神論者と言っても
宗教の影響ってものすごくある。
善悪も宗教の影響なんだそうです。
ワンネスというのは
みんな同じひとつの存在から派生した
どのようなものも同等とする考え方。
善悪に分けるのは宗教的な考え方。
ワンネスと善悪は相容れないんだ!
って分かってまだ考え中です。
(じゃあ人を殺したっていいのかって
極端な話になりやすいけど
人を殺したって良くても
殺さない人は殺さないと思うんです。
殺す人は殺すし
殺される人は殺される。
殺す・殺されることが問題なのは
基本的に死が理解出来ていないからで
知らない、こわいものだからです。
死の意味が隠されていることと
善悪の考えは関係あるのかもしれません。人類はもう死のプロフェッショナルになっててもいいくらいは死んでると思う。)
すごく話がそれましたが
どちらがいいってことではなくて
いいところがあったら
お互いに吸収出来たらいいですね。
サタニック寺院が一番氣に入りました(笑)
色々面白いですね♪そしてうちに色あせた「地球の上に生きる」があります!旦那さんのご両親は昔ヒッピーのような思想で暮らしていたそうで、その時の本を旦那さんが受け継いで持っていたみたいです。「自分で子供も産まなくちゃ」って”セルフお産”のページもあって衝撃的ですが楽しい本でした♪
なんか今はそんな所を少しも感じさせない、のんびりしてる義理の両親ですが、若い頃はめちゃ色々と反抗していた時期があったのかなぁ、とメタさんの記事を読んで思いをはせていますw でも確かに旦那さんは物質/資本主義の悪いところを見つけてブツブツ独り言を言ってる時があるので考え方は受け継がれているんでしょうね!