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『「自分」から自由になる沈黙入門』で煩悩を破る

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もうすぐ大晦日ですね。除夜の鐘が始まる前に、煩悩を打破する方法を学んでみましょう。


近所にある中央図書館は日本語書籍のコーナーもあって、たまに借りてきて読むのですが、最近見つけた小池龍之介『「自分」から自由になる沈黙入門』というのが、とても面白かったのでご紹介しましょう。


「自分」から自由になる沈黙入門

日頃モヤモヤ考えていたことを、誰かがきちんと文章にしてくれて、溜飲が下がるみたいな時ってありますよね。私にとっては、本書はまさにそれでした。

たとえば本書は、以下のような人にオススメです。

  • 人から自分に関係ない話を聞かされるのにうんざりする
  • 自己アピールをする人にうんざりする
  • そんな自分も、つい自己アピールをしてしまうことがあり、それにもうんざりする
  • 批判の根っこには、自己満足や自慢があると思っている
  • とにかく煩悩がうざすぎる

そんなことを考えてモヤモヤしている人には、是非一度読んでみると、すっきりすると思います。

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著者はお坊さんだそうですから、本書には仏教の教えについても、いろいろ散りばめられています。仏教にあまり縁のない日本人にとって、仏教の教えというと、不殺生とか座禅くらいしかピンと来ませんが、仏教の教えというのはすごく体系化されています。

どう体系化されているかと言うと、数がやたら出てくるんですよ。八正道(八つの正しい修行)とか、十善戒(10の良い行い)とか、三毒(3つの煩悩)とか。いろんな概念が、セットとして分析されているんですね。また、マインドフルネス瞑想の原典的解釈である念定捨の瞑想法についても書かれていて、勉強になります。

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煩悩を打ち砕く仏教的アプローチについては、たとえばこのように書かれています。

ダイエット中なのにおやつが食べたくて我慢できぬ時

自分が食べたいという気持ちのせいで「苦」を味わっているんだ、という厳然たる事実を、思い切り一点集中の集中力にて、実感してみることであります。「迷いと欲の苦受。迷いと欲の苦受」と念じながら、苦しみをロック・オン。そのように、自分のキモチを見つめながら苦しみを味わい尽くし候へば、いつの間にか食欲は夢幻のように流れ去っていることでせう。

いくら念じてもなかなかうまくゆかぬ場合は、「この欲もまた無常であり、そのうち流れ去る、これもまた流れ去る、これもまた流れ去る」と念じてみることもお勧めいたします。

苦しみを修行としてとらえるところは、日本人には割とナチュラルな思考ですが、「この感じ、すんなり頭に入る」って人は、前世でお坊さんだったのかも知れませんよ。

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しかし最大の問題は、実は相当ハードコアなことを書いてるのに、見た目をポップにしすぎてしまったこと。エゴ解放マニアみたいな人には喜ばれますけど、そうじゃない人にとっては、自分を捨てろとか、かなり余計なお世話なんですよね。

あと文体にクセがあって、読みにくいこと。「~しませう」みたいな。アマゾンのレビューでも、その点をコキおろされていますが、エゴを解放しようと思ってるのに、相手のエゴにひっかかるのも何ですから、そこは読み飛ばす感じでいいと思います。

※文体については編集部側の意向も大きいですから、著者だけを責めても可哀そうな気がします。ゼロ年代の日本文学って、それこそ嶽本野ばらじゃないですけど、クセのある作家が非常にもてはやされていましたからね。

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ピンと来た方は、なにしろマーケットプレイスで1円ですから、試しに読んでみて損はないと思います。

文体を普通に改めたバージョンもあるそうですから、こっちの方がいいかも知れませんね。