「感想」「批評」「批判」「悪口」はどう違う
世の中では、批判と中傷の違いが問題になっています。言葉の暴力を肯定する人はいないでしょうけれど、批判を封じることで言論の自由が奪われるという懸念もありますね。
何が「批評」で、何が「批判」かという辞書の定義は実は分かりにくいのですが、「感想」「批評」「批判」「悪口」の、それぞれのラベルに、どのような要素が入っているかを分類した分かりやすい表があります。
こうして見ると、世の中にあふれる言葉の多くは「感想」か「悪口」の二種類になるような気がしますね。「批評」や「批判」は、「評価理由の説明責任」があると書かれていますから、専門的な知識やデータが要るように思えます。
日本語で「批評」より、「批判」の方がネガティブなニュアンスがあります。上の表を見ると、「批評」は良い点と悪い点の両方を検討するのに比べ、「批判」は、否定的な点のみを指摘することになっています。
面白いのは、「批評」と「批判」を和英辞書で探すと、どちらも同じ”criticism”という単語になることです。criticismは、メリットとデメリットを比較・検討する行為や、その考察を意味しますが、必ずしも悪い意味ではなく、むしろ成長を促すポジティブなものと捉えらることが多いです。
私たち日本人は批判的な意見を言うこと・受け取ることに対して、あまり免疫がないのかも知れないと思います。欧米ではディベート形式の授業を重んじるから議論はお手の物だなんて、よく聞きますよね。
ちなみに、否定的な点のみを指摘する「批判」は、英語ではnegative criticism(ネガティブな批判)、または、blaming(叱責)、accusation(非難)などの言葉に該当します。相手を否定するだけなら、成長を促すポジティブなcrisicismにはならないと英語では考えるのでしょうね。
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批評のメリットとデメリット
改めて「批評」という言葉について、考えてみましょう。「批評」とは、客観的事実に基づき、メリットとデメリットを分析・判断することです。
批評をしたり聞いたりする上で最大のメリットは、成長や改善を助けるツールとして機能することです。他人からの批評は、自分では気づかなかった新しい視点を得るのに役立ち、そうでなければ見落としてしまう可能性に気付くことが出来ます。コミュニティや職場などの人間関係の中で、自由に感想を伝えたり、建設的な批評を共有できるなら、生産性も向上すると言われます。
しかし、どれほど建設的な批評でさえも、時と場合、方法を選ばずに行うと、相手の自尊心やモチベーションをくじき、望んでいたのと反対の結果をもたらす可能性があります。そのような事態を避けるために、批評する立場の人間に十分なスキルと配慮が必要なのは、人間関係や親子関係の不和から起きる自尊心の問題からも明白です。
そして、効果的な伝え方を知らない人からの批評や、悪意・侮蔑の含まれた破壊的な批判を受け取るなら、デメリットばかりが大きくなります。
建設的な批評と破壊的な批判
建設的な批評と、破壊的な批判の違いについて考えてみましょう。このように表にして比較してみると、それぞれの性質や目的の違いが分かりやすいですね。
建設的な結果をもたらさないのに、なぜ批判を繰り返してしまうのか
望む結果や解決策につながらないのに、批判を続けてしまう人がいるのはなぜでしょうか。ある臨床研究によると、批判が自己防衛の簡単なツールになるからだと言われています。私たちは、自分の価値観とまったく関わりのない人の言動や態度をスルーすることは簡単にできますが、自分の価値観に敵対したり、それを損なう人の行動や態度には、批判的になります。相手の価値や自信を挫くことで、相対的に自分の価値を強化・肯定し、満足するからです。
他人に対して批判的な人は、自分にも非常に強く批判的であると言われます。このような人は、子どもの頃、特に批判が痛みを伴う幼年期に、保護者や兄弟姉妹に批判されたことがあるかも知れません。たとえば「〇〇をするのは悪い子よ」と言われた場合、幼い子どもであれば、自分と自分の行動を区別して考えることは、ほぼ不可能に近いでしょう。より直接的に「〇〇をしないで欲しい」と言われた場合でも、自分に価値がないと受け取ってしまう可能性は大です。
自分に価値がないと思った子どもは、批判を自分に向けます。自分を罰すれば相手の望みに適うと考えたり、手に入れた愛を失うくらいなら、最初から手に入れない方がいいと拒絶します。やがて成長するにつれ、自分に向けた批判は、他人にも向かいます。自分が失敗した時に、自分を責めたり批判する人は、高い確率で他人に対しても同じことを考えます。それは自分を受け入れることができるまで、形を変えて繰り返されます。
批判が私たちの健康に与える影響は、喫煙と同じだと言われます。自分自身はもちろん、周りの人にもダメージを与えると分かっていても、なかなかやめられません。
建設的な批評をするには
建設的な批評とは、より肯定的な結果がもたらされることを意図して行われるものです。人格を否定するのではなく、状況を分析し、改善できる行動について考えるなら、ポジティブな成長が期待できます。そのためには、以下のようなことに気を付けましょう。
- 相手の自信を傷つけることなく、改善する方法に焦点を当てましょう
- 性格を変えようとするのではなく、見たいと思う行動を引き出すように注意を向けてください
- 問題点を責めるのではなく、ポジティブな提案をしてください
- 相手の自律性を尊重してください。
- 相手の行動が望み通りの結果につながらなくても、愛情の分量を減らしたり、相手を罰することがないようにしてください
私たちは知らず知らずのうちに、いろんなことを否定したりします。誰かに対する批判は、自分が手に入れたい価値や状況を映し出すことがあります。子どもの頃のトラウマは誰もが抱えていて、みんな傷つきながら大人になります。イガイガしながら生きるのは大変ですから、互いに優しくしたいです。
建設的な批評とは、他人だけでなく、自分と仲直りする時にも役に立ちそうですね。