旦那さんと出会ったのは、別部署の上司のバースデーパーティーでした。一度も一緒に働いたことのない私がなぜ誘われたかと言うと、パーティが催されるビルの隣のビルに住んでいたからでした。
もちろん全く気が進みませんでいしたが、その頃の私は自分の安全ゾーンにこもりがちだったので、たまには度胸試しにと、しぶしぶ行くことにしました。
ケーキがあるからおいでよって言われても、別に好きじゃないんだよな…なんて思いながら。
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部屋に入ると、中央のテーブルはコミュニティの仲間ですっかり陣取られ、その横のソファーしか空いている場所がありませんでした。そこには見知らぬ人が座っていて、その片側に私が座りました。ピンクのカーディガンを着たその人が、後の旦那さんです。
彼は、コミュニティの新しいプロジェクトであるコワーキングスペースとギャップイヤースクール(3月に高校子を卒業し、9月に大学に入学するまでの期間に経験を積むための学校)を立ち上げるために、新しく雇われたばかりでした。
自己紹介から始まり、自然と会話の流れは教育や新しい社会のあり方へと進み、私は教員時代の自分の経験を話し、彼は新しい世界のために、いかに教育が重要な役割を担うかを熱っぽく語り始めました。しかし、そのヴィジョンがあまりに壮大なので「それはいい話だと思うけど、どうやって実現するの?」と聞くと、彼は満面の笑みでこぶしを突き上げながら、こう答えました。
「レボリューション!」
出た出た、この手のタイプ。ベイエリアに多いんだよな…と思いながら、私は言葉を返しました。
「でもさ、”革命か投票か”っていう二つの極論は、争いを生むだけだよ。現実的な答えは、その中間のどこかにあると思う」
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この時の会話は、その後も、私と彼の間で何度も話題にのぼる印象的なものとなりました。どうやら気の合いそうな人なのは確かでした。
パーティーがひと段落すると、各々に切り分けられたバースデイケーキを彼はぺろりとたいらげ、自分のオフィスに戻っていきました。
やがてお開きになり、私も帰ろうとすると、彼は玄関前にある自分のオフィスで待ち構えていて、電話番号を書いた小さな紙を渡してくれました。携帯電話を持ってないと言うと、一体、どうやってこの世界で暮らしているのかと笑いながら、メールアドレスも書き添えてくれました。
そうして、私たちはご飯を食べに行くことになったのでした。
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私の住んでいたビルは、働いていたお寺の所有で、玄関先をホームレスのおばあさんが寝床にしていました。彼女は仏教徒であり、気に入った人には哲学や政治や歴史などについての話をふっかけるので有名でした。
最初のデートの日、待ち合わせに玄関に下りていくと、彼は件のおばあさんと熱い討論で盛り上がっている最中でした。私の知らない固有名詞が飛び交い、二人は大いに意気投合しているようでした。そこへ私が加わって、話題は仏教へと移り変わりました。おばあさんに、あなたも仏教徒なのかと聞かれた彼は、こう答えました。
「僕の宗教には、名前がないんだ」
もしかして、この人との関係は長く続くことになるのかも知れないと、なんとなく思いました。けれどもこの時、私は既に本部に異動になることが決まっていたので、今さらバークレーの誰かと付き合うなんて考えられなかったのです。
まさかね。
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最初のデートは無難に終わり、当初、観ようとした映画がやっていなかったので、別の映画館に行こうと、二度目のデートが決まりました。
翌週の金曜、二度目のデートの帰り、すっかり夜も更け、人気がなくなった街を私たちは歩いていました。危ないことがあったら僕が守るよなんて冗談ぽく言うのを聞きながら、夜道なんか全然怖くないんだけどなと考えていました。
そんな中、ふと見つけた遊歩道脇のベンチに、彼はいきなり私を座らせると、自分は目の前に座り、まっすぐ私を見つめて、こう言いました。
「君と恋人として付き合えるなら嬉しいけど、君が友達でいた方が心地良いなら、それも構わない。僕は期待も恐れも抱かないから、フィルターなしで、君がどう思う聞かせてほしい」
ど真ん中ストレートを投げてくる潔さに、なかなかやるなと胸を撃たれましたが、どう答えてよいか分からず、次のデートまで待ってくれと伝えました。
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次のデートでは、オークランド美術館に行きました。常設展示室では、彼が足を止めて見入る作品が、ことごとく私には興味のないものだったので、妙な胸騒ぎがありましたが笑、特別展示でやっていたヒップホップの歴史では、DJを入れたインスタレーションで二人で踊りまくって楽しかったのを覚えています。
恋人を作る予定はないけど、ただ、彼のことをもっと知りたいと思いました。そこからなんだかんだと毎週デートを重ね、ふと気が付くと一緒に住んでいて、本部に異動後も関係は続き、いつのまにか結婚していました。妙なものです。
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彼と結婚しようと思ったのは、好きだから一緒にいたいと言うロマンチックな要素は、あまりなかったです。もちろん彼のことは大好きですけど、愛着って私の人生ではあまり重要な要素ではありません。いろんな場所を転々としてきましたから、愛する人や場所なんて、それこそ世界中にあって、いちいち愛着を持っていたら体がバラバラになりそうだからです。愛してるけど、愛着は持たない。
彼との関係が貴重だったのは、もっと別の部分にあります。たとえばギブアンドテイクのつり合いが取れること。お互いの意見を、それこそフィルターなしで、正直に話し合えること。必ず正面から向き合ってくれること。関係がお互いのライフパスやテーマに沿っていること。人生のどんなイベントも成長のための変容プロセスと考えること。生活スタイルが似ていることなど。割と渋めの理由が全てです。なにしろお互い、初婚の熟年結婚ですからね。
それから、万が一、二人が別れることになったとしても、それは互いが成長したからと捉え、学びこそ得ても、結婚という選択をしたことに後悔はしないと感じました。そして、彼も同じように考える人だと知っていました。
あとは彼が牛みたいにピースフルで、こんなキュートな生物にはなかなかお目にかかれないと思ったことですかね。
さて、どうなることやら。
大人の結婚ですね。
俯瞰しながら、お互い歩んで行くのは、攻略しがいがあります。
楽しみましょう!
楽しそう♪
月並みですが、世の中って、そんなもんですよねぇーって、勇気をいただきました。わたしもコンフォートゾーンを少しはずして脇道・道草食ってみます!
こんな良い意味でぶっとんだ人たちいるんだって、思わされました。わたしが今付き合っている人は、たしかに一緒にいて自分のことを客観的にみてくれるから成長するのには大切な人ですが、幼い部分をみると、私が気付いた方がいいことを教えてあげる人になってしまって、わざわざ教えたり、苦労する必要があるのかなって思ったりします。まだ私はガキんちょなので、そういう風にしかみれないんですが、もっと自分が成長できた時に、メタさんのように素晴らしある人と引き寄せられたいです。
>「君と恋人として付き合えるなら嬉しいけど、君が友達でいた方が心地良いなら、それも構わない。僕は期待も恐れも抱かないから、フィルターなしで、君がどう思う聞かせてほしい」
きゅん♥
すごい告白ですね⭐
どういう関係でも、君と関わりたいんだ!
&尊重。
って感じ♪
「‥フィルターなしで、君がどう思う聞かせてほしい」
なんで自分に言われてるみたいにどきどきしてるのだよ私
メタさんも、ご主人様も。こちらの心までがこう、清々しくなるお二人だなあ‥゜.+°
きゃー☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
旦那様、素晴らしい告白♡
結婚の理由も大人な感じで…
何も言うことはございませぬ笑。
>お互いの意見を、それこそフィルターなしで、正直に話し合えること。必ず正面から向き合ってくれること。
誰かに対して「この人は必ず正面から向き合ってくれる」って思えることって、
宝物みたいな信頼感ですね。
素敵ななれそめ、ありがとうございます(^^)
moaさん
(っ’-‘)╮ =͟͟͞͞♡ブォン
中盤から、ニヤニヤが止まりませんでした。
そっか、牛さんと結婚したんですね、
いーなー。
放牧してるんですか笑
メタさんメタさん、私、夫婦の馴れ初め聞くのが、生き甲斐と言ってもいいほど好きなんですよ。
外国人って、こういう映画のセリフのような事をしれっと言うからぁ…!
惚れてまうやろー!!
とても大人な恋愛から、伴侶になったという感じなんですね。
ビターチョコのお味がしました(*’ω’*)
今日はとてもしんどい出来事があって、身も心もボロボロだったんですけど、
こちらの記事を読んだら、ふわっと心が軽くなり、微笑が浮かびました。
まだ温かいです。
メタさん、幸せのおすそ分けをありがとう。
(っ’-‘)╮ =͟͟͞͞♡ブォン
運命のバースデーパーティー! 人生どこでどうなるか分からない。
いつも笑顔で。
ナッちゃんも、愛のおすそ分けありがとう〜(^o^)
Lala how the life goes on ♪
離婚経験者の私がモノ申すのもいかがなものか、と思いつつ(^ー^)
結婚って、
楽しく、愛おしく、苦しく、面倒くさい毎日の営みだと思います。
生涯何かを我慢してまで添いとげるのが善・とは思いませんが、
結婚という体験を選ばれたなら、どうぞ存分に、彼との時間や生活を大切に楽しんでくださいね❤
Creat a nice day \(^o^)/✨
メタさん、ご結婚おめでとうございます!
だんなさまはとても誠実な方だと思いました。
>この人との関係は長く続くことになるのかも知れない
こんな予感、私もありましたよ。今の夫が本州から転勤してきて、初日の朝礼で自己紹介を始めたとき、神様が「ちょっとだけ、ええこと教えたるわ」とでも言うかのように頭のてっぺんからストッと「この人と結婚する」という印象が落ちてきたのです
やっぱ物理的世界は見えない世界に勝てませんね。見えない世界の光にくらべたら物理的世界はゴミ集積所のようで
メタさんとだんなさま、同じ速さでスルスルスルーッと同じ時の流れを流れていっているところがステキだと思いました。だから出会ったのでしょうね
末永くお幸せに♡
もしかしてお名前も「ヨーコ・オノ・レノン」みたいにかっこよくなっちゃったんですか?
「僕の宗教には、名前がないんだ」
のところで突然涙がでました。
素敵な旦那様とお幸せに。
メタさんが 結婚発表する
数日前から 聞いている曲の
いちフレーズ
You raise me up to more than I can be
あなたは私に力をくれる
自分を越えて行けるように
(と訳している人のを参照)
メタさんご夫妻のように
形而上の強い繋がりが
周囲にも力をくれるのだな
と感じました
素敵なお話 ありがとうございます!
胸にぐっときますね(*˘︶˘*).。.:*♡
なんて素敵な告白だ!
お二人のイメージがキラキラしていて眩しい限りです☆
最後まで読んで牛さんの写真を見たら、旦那様のキュートさがめっちゃ伝わって来ました。
告白の言葉もお人柄が滲み出てて、ふぉぉーっ!てなりました。
私だったらドナドナ顔が見たくて、イタズラするかその顔をリクエストしてしまいそうです。
日本も寒いんですが、心がほっこり温まりました。
メタさん、いつもありがとうございます。
数ヶ月前、メタさんに
「結婚失敗したとか言ってみたい」
と言われたことが懐かしい…
きっと旦那様とつながってるところが深いから、わたしみたいにはならなそうですね(^^)♪
わたしも魂でつながる恋愛してみたかったなぁ。
すてきなカップル誕生ですね♡
またお二人の話教えてくださいね~。
natsukiさーん
(っ´^ω^
c)メタンコアッタカイ!!!
↑なんか出てきましたw
あれこれ書いたんですが
ひとまず心からのお礼を…
「この人は必ず正面から向き合ってくれる」
私にとってのなつきさんですね。
なつきさんの真っ直ぐな視線を思うと
生きていけるってやっぱり
めっちゃ思う…
らぶれたーですいません。
(っ´^ω^c)メタンコアッタカイ!!!笑
なつきさんが100人居る村に
私は住むんだー…
ヽ(ヽ゚ロ゚)ヒイィィィ!!!
そんな村おやめなさい!!
すてき。
そして、とてもよくわかる。
目に見えてる状態、環境、状況は違えど、わたしも同じ感覚を知っています。
びっくりするくらい真逆なのに、なんか似ている、というか同じ、な人。いわゆる恋愛のドキドキは少ないし、たまにそういうぎゅっとなる感情を抱いてつらくなっても、まあいいかってなれる人。
ほんとふしぎです。
考えてるとわたしたちの関係も、メタさんご夫妻とやっぱり結構似ています。(男女の立場が逆ですけど笑)
ご主人と同じようなことを彼に言ったことがあるんです。
そして、関係性の名称はなんでもいいから笑顔でいてくれ、と。
こんなの言えちゃう人がまず希少ですしね。
これだから愛は、っておもいます。